新型護衛艦(FFM)もがみ型とは?ステルス・少人数運用・多機能化を実現した次世代艦艇の全貌

mogami_class_ffm_jmsdf(※画像はイメージ・AI生成コンセプトアートです)

📌 結論・ポイント(3行要約)

  • 少人数で多くの任務をこなす護衛艦:もがみ型(3,900トン型)は2022年から就役した海上自衛隊の多機能護衛艦(FFM)。乗員は平時約90名で、警戒監視、対潜戦、対水上戦に加え、従来は専用の掃海艦艇が担っていた機雷戦もこなす。
  • 12隻で建造を終え、新型FFMへ:当初は22隻の計画だったが、2023年に12隻で建造を終える方針に変更。令和6年度計画艦からは、VLSを32セルに倍増した約4,800トンの「新型FFM」に移行した。
  • 初の本格的な艦艇輸出の土台に:オーストラリア政府は2025年8月、もがみ型の能力向上型を次期汎用フリゲートに選定。2026年4月には三菱重工業との間で最初の3隻の建造契約が結ばれた。
目次

1. もがみ型護衛艦(FFM)とは

もがみ型護衛艦は、海上自衛隊が2022年から就役させている多機能護衛艦です。FFMの「FF」はフリゲート、「M」は多目的(Multi-purpose)や機雷(Mine)を意味するとされます。艦名には「もがみ(最上川)」「くまの(熊野川)」のように日本の河川の名前が付けられています。

開発の背景には二つの課題がありました。一つは、日本周辺での警戒監視や中国海軍の活動増加により、護衛艦の任務量が増え続けていること。もう一つは、少子化で自衛官の確保が難しくなっていることです。もがみ型は「隻数を確保しつつ、一隻あたりの乗員を減らす」ことを狙って、船体・装備・運用方法を一体で設計し直した艦です。

あぶくま型など旧式の小型護衛艦や、掃海艦艇の一部の役割を引き継ぐ位置づけで、通常の護衛艦部隊(4個護衛隊群)とは別に、FFMと掃海艦艇で構成する部隊に配備する構想が2018年の防衛計画の大綱・中期防で示されました。

2. 主要諸元と装備

【表1】もがみ型の主要諸元・装備

項目 内容
基準排水量 約3,900トン
全長/全幅 133.0m/16.3m
主機 CODAG方式(ディーゼル2基+ガスタービン1基)
速力 30ノット
乗員 平時約90名
砲 62口径5インチ(127mm)単装砲
ミサイル SeaRAM(近接防空)、17式艦対艦誘導弾(4連装発射筒×2基)
VLS 16セル(後日装備。現状で運用できるのは対潜用の07式垂直発射魚雷投射ロケットのみ)
対潜 可変深度ソナー(VDS/TASS)、324mm3連装短魚雷発射管
機雷戦 対機雷戦用ソナー、水中無人機(UUV)・水上無人機(USV)、簡易型機雷敷設装置

3. もがみ型の3つの特徴

① レーダーに映りにくい船体

船体の側面を傾斜させ、凹凸を減らすことでレーダー反射を抑えています。各種アンテナを一本の塔にまとめた統合マスト(ユニコーン)も、外観上の大きな特徴です。艦内には、周囲の映像やレーダー情報を円形の大型スクリーンにまとめて表示する統合情報センターを設け、少人数でも状況を素早く把握できるようにしています。

② 省人化と「クルー制」

自動化を進めた結果、乗員は平時約90名と、従来の同規模の護衛艦より大幅に少なくなりました。さらに、艦と乗員を固定しない「クルー制」の導入が計画されています。防衛省のイメージでは、3隻に4組の乗員を割り当て、1組が休養している間も3隻を動かせるようにします。艦の稼働率を上げつつ、隊員の休養を確保する狙いです。

③ 機雷戦までこなす多機能性

水中無人機(UUV)や水上無人機(USV)を使って機雷を探し、処分する能力を持っています。これまで木造やFRP製の専用の掃海艦艇が担ってきた任務の一部を、護衛艦がこなせるようになりました。乗員が機雷原に近づかずに済むため、安全性の面でも利点があります。

4. 建造と配備の経緯

2018年の防衛装備庁の資料では、平成30年度以降に22隻を建造する計画でした。その後、防空能力の強化が求められるようになったことなどから、2023年に計画が見直され、もがみ型は令和5年度計画艦までの12隻で建造を終えることになりました。1番艦「もがみ」と2番艦「くまの」は三菱重工業と三井E&S(現・三菱重工マリタイムシステムズ)の2社で建造され、2隻目の「くまの」が先に引き渡されました。最終12番艦「よしい」も進水しています。

【表2】もがみ型の主な建造・就役実績

艦名 建造所 進水 就役・引渡し
FFM-1 もがみ 三菱重工業 長崎造船所 2021年3月3日 2022年4月
FFM-2 くまの 三井E&S 玉野艦船工場 2020年11月19日 2022年3月
FFM-3 のしろ 三菱重工業 長崎造船所 2021年6月22日 2022年12月
FFM-4 みくま 三菱重工業 長崎造船所 2021年12月10日 2023年3月
FFM-5 やはぎ/FFM-6 あがの 三菱重工業 長崎造船所 2022年 2024年5月/6月
FFM-7〜12 三菱重工業ほか 2023年以降 順次就役(最終12番艦「よしい」は進水済み)

配備先は当初、掃海艦艇を束ねる掃海隊群でしたが、2024年3月に「もがみ」「くまの」は護衛艦隊の第11護衛隊へ編成替えされました。建造費は1隻あたりおおむね500億円前後で、汎用護衛艦やイージス艦に比べて安価に隻数をそろえられる点も特徴です。

5. 新型FFM(令和6年度型護衛艦)への移行

13隻目以降は、もがみ型を一回り大きくした「新型FFM」(令和6年度型護衛艦、4,800トン型)として建造されています。最大の違いは防空能力で、VLSを32セルに倍増し、23式艦対空誘導弾(A-SAM)を運用できるようにします。長射程の12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載も想定されています。建造費は大きく上がり、2025年度予算案では3隻で約3,148億円が計上されたと報じられています。計画隻数は、2023年の防衛省の説明では10隻とされましたが、12隻とする資料もあり、今後の予算で確認が必要です。

【表3】もがみ型と新型FFMの比較

項目 もがみ型 新型FFM
基準排水量 約3,900トン 約4,800トン
全長/全幅 133.0m/16.3m 約142m/約17m
VLS 16セル(対潜ロケットのみ運用) 32セル(対空ミサイルも運用)
主な追加装備 ― 23式艦対空誘導弾(A-SAM)、12式地対艦誘導弾能力向上型(搭載想定)
乗員 約90名 約90名

6. オーストラリアへの輸出

2025年8月5日、オーストラリア政府は次期汎用フリゲートとして、日本とドイツの2案のうち、三菱重工業が提案したもがみ型の能力向上型(令和6年度型護衛艦)を選定しました。防衛大臣は記者会見で、ステルス性、省人化、建造実績などが評価されたと説明し、日豪で計11隻を共同開発・生産する計画を示しました。2026年4月には三菱重工業とオーストラリア政府の間で最初の3隻の建造契約が結ばれ、長崎造船所で建造し、1番艦は2029年12月に引き渡す予定です。日本の防衛装備品の海外移転としては過去最大規模の案件となります。

7. 評価と課題

  • 評価されている点:少ない乗員で多くの任務をこなせること、機雷戦を護衛艦単艦で行えること、比較的安価に隻数をそろえられること。
  • 防空能力:VLSは後日装備で、対空ミサイルは運用できず、個艦防空はSeaRAMが中心です。この弱点を補うことが新型FFMへの移行の大きな理由です。
  • 被害を受けた際の対応:乗員が少ないため、被弾時の消火や浸水への対応(ダメージコントロール)に人手が足りなくなるおそれが指摘されています。
  • クルー制の運用:艦ごとの装備の違いや部隊の一体感をどう保つかなど、実際の運用で検証すべき点が残っています。

8. 関連装備・政策へのリンク

9. 公的出典・参考資料

  • 防衛省「防衛大臣記者会見」2025年8月5日(オーストラリアの次期汎用フリゲート選定)(mod.go.jp)
  • 防衛省「我が国の防衛と予算」各年度版(mod.go.jp)
  • 海上自衛隊 公式サイト(艦艇紹介)(mod.go.jp/msdf)
  • Yahoo!ニュース エキスパート(高橋浩祐)「2025年度防衛予算案、海自「新型FFM」3隻の建造費に3148億円」(news.yahoo.co.jp)
  • マイナビニュース「次期汎用フリゲートの共同開発・生産で、三菱重工と豪州政府が契約締結」2026年4月20日(news.mynavi.jp)
  • 乗りものニュース「新型FFM」最新模型に関する記事(2026年4月24日)(trafficnews.jp)
最終更新日:2026-10-12

🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)

当解説は、防衛省・防衛装備庁などの公的機関が公表した資料をもとに、DEFENSE NAVI編集室が作成・更新しています。誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからお知らせください。

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