📌 結論・ポイント(3行要約)
- 22隻体制の主力:海上自衛隊は潜水艦を22隻体制(練習潜水艦などを除く)に増やし、そうりゅう型(12隻)とたいげい型が主力を担う。日本周辺の海峡や南西諸島周辺の海中で、警戒監視や情報収集にあたる。
- リチウムイオン電池で長く静かに潜る:そうりゅう型の11・12番艦と、最新のたいげい型は、主蓄電池にリチウムイオン電池を採用。通常動力型潜水艦としては日本だけが実用化しているとされる。
- 次はミサイルを撃てる潜水艦へ:防衛省は、長射程ミサイルを垂直に発射できる装置(VLS)を備えた次期潜水艦の研究を始めている。2026〜2029年度に三菱重工業と設計の研究を行う。
1. 海上自衛隊の潜水艦部隊
海上自衛隊の潜水艦は、すべてディーゼルエンジンと蓄電池で動く通常動力型です。原子力潜水艦のように長期間潜り続けることはできませんが、静かに潜って相手に気づかれずに活動できることが最大の強みです。平時には、日本周辺の海峡や南西諸島周辺などで、他国の艦艇や潜水艦の動きを監視しています。
2010年の防衛計画の大綱で、潜水艦はそれまでの16隻から22隻に増やす方針が決まりました。三菱重工業と川崎重工業の神戸の造船所が、ほぼ毎年交互に1隻ずつ建造しています。古い艦を早めに退役させずに使い続けることなどで、22隻体制を実現しました。
2. そうりゅう型とたいげい型
【表1】そうりゅう型とたいげい型の比較
| 項目 | そうりゅう型 | たいげい型 |
|---|---|---|
| 隻数・就役 | 12隻(2009〜2021年) | 2022年から毎年1隻のペースで就役 |
| 基準排水量 | 約2,950トン | 約3,000トン |
| 全長 | 84m | 84m |
| 動力 | ディーゼル+鉛蓄電池+スターリングAIP(1〜10番艦)/ディーゼル+リチウムイオン電池(11・12番艦) | ディーゼル+リチウムイオン電池(4番艦から新型の高出力ディーゼル機関) |
| 主な兵装 | 魚雷発射管(89式魚雷、ハープーン対艦ミサイル) | 魚雷発射管(18式魚雷、ハープーン対艦ミサイル) |
そうりゅう型:AIPから世界初のリチウムイオン電池へ
そうりゅう型は2009年から就役した潜水艦で、1〜10番艦は、空気がなくても発電できるスターリング機関(AIP)を積み、低速で長時間潜り続けられるようにしました。11番艦「おうりゅう」(2020年就役)と12番艦「とうりゅう」(2021年就役)では、AIPと鉛蓄電池をやめてリチウムイオン電池に切り替えました。電池の容量が大きく充電も速いため、水中で高速を出せる時間が延び、潜水艦の運用が大きく変わったと評価されています。
たいげい型:静粛性と居住性の向上
たいげい型は、そうりゅう型の後継として最初からリチウムイオン電池(GSユアサ製)を採用した潜水艦です。艦内の機器を「浮き甲板」の上に載せて音や振動が外に伝わりにくくし、そうりゅう型を上回る静粛性を持つとされます。また、女性自衛官向けの寝室区画を最初から設けた点も特徴です。4番艦「らいげい」からは、川崎重工業製の高出力の新型ディーゼル機関(12V 25/31型)を搭載し、充電にかかる時間の短縮が図られています。
【表2】たいげい型の主な艦
| 艦名 | 建造所 | 主な経過 |
|---|---|---|
| たいげい(SS-513) | 三菱重工業 神戸造船所 | 2020年10月進水、2022年3月就役。2024年3月に試験潜水艦(SSE-6201)に種別変更し、新技術の試験に使用 |
| はくげい(SS-514) | 川崎重工業 神戸工場 | 2021年10月進水、2023年3月就役 |
| じんげい(SS-515) | 三菱重工業 神戸造船所 | 2024年3月8日に引き渡し。横須賀の第2潜水隊群第4潜水隊に配備 |
| らいげい(SS-516) | 川崎重工業 | 2025年3月就役、呉基地に配備。新型ディーゼル機関を初搭載 |
| ちょうげい(SS-517)以降 | 三菱重工業/川崎重工業 | 5番艦「ちょうげい」は横須賀に配備。6番艦「そうげい」、7番艦「しょうげい」も進水 |
3. 潜水艦の役割
潜水艦の主な任務は、平時の警戒監視と情報収集、そして有事に相手の艦艇や潜水艦の行動を阻むことです。海の中に潜む潜水艦は、相手からすればどこにいるか分からないため、存在そのものが抑止力になります。とくに、中国海軍の艦艇が南西諸島の間を抜けて太平洋に出る動きが増えるなか、周辺の海峡での監視の重要性が高まっています。
4. 次期潜水艦:VLSの搭載へ
2022年12月の防衛三文書では、潜水艦に長射程のミサイルを搭載し、反撃能力などに活用する方針が示されました。現在のたいげい型にはミサイルを垂直に発射する装置(VLS)はなく、魚雷発射管からハープーンなどを撃つ方式です。
防衛装備庁は2025年度から、水中から撃つ垂直発射装置の研究試作を川崎重工業と進めています。さらに2026年には、三菱重工業と「次期潜水艦(VLS搭載型)のトータルシップ最適化設計に関する研究」(約39億円、2026〜2029年度)の契約を結びました。VLSを積むと船体は長く大きくなる見込みで、見つかりにくさや運動性能をどう保つかが課題とされています。
5. 課題
- 乗員の確保:長期間、狭い艦内で勤務する潜水艦乗りの確保は難しく、居住性の改善や女性自衛官の登用が進められています。
- 建造基盤の維持:潜水艦を造れる造船所は限られており、毎年1隻の建造を続けて技術と人材を維持することが重要です。
- 新たな役割への対応:ミサイル搭載で役割が広がる一方、静粛性という強みを損なわない設計が求められます。
6. 関連装備・政策へのリンク
- ▶ 新型護衛艦(FFM)もがみ型とは?対潜戦の連携
- ▶ 三菱重工業の防衛事業とは?神戸造船所の潜水艦建造
- ▶ 12式地対艦誘導弾能力向上型と潜水艦発射ミサイル構想
- ▶ 防衛三文書(2022年版)の水中優勢確保策
7. 公的出典・参考資料
- 海上自衛隊 公式サイト(潜水艦)(mod.go.jp/msdf)
- 乗りものニュース「海自の「次期潜水艦」検討本格化へ たいげい型から大変化! ミサイル垂直発射装置も搭載」2026年9月15日(trafficnews.jp)
- Motor-Fan「最新鋭潜水艦「じんげい」就役!」2024年3月17日(motor-fan.jp)
- 安芸の国「潜水艦 らいげい(SS-516)」2025年3月(akinokuni.jp)
- funeco「SSE-6201 たいげい」(funeco.jp)
🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)
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