📌 結論・ポイント(3行要約)
- 国産の長射程ミサイル:12式地対艦誘導弾能力向上型は、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を大幅に改良した国産の巡航ミサイル。射程は約900〜1,500kmと報じられ、トマホークと並ぶ反撃能力(スタンド・オフ防衛能力)の柱となる。
- 2025年12月に開発完了:2025年10〜11月に計7回の発射試験を行い、防衛装備庁が2025年12月19日に開発完了を発表。当初計画を前倒しした。
- 2026年3月に健軍駐屯地へ初配備:地上発射型は2026年3月31日に熊本県の健軍駐屯地に配備された。艦艇や航空機から撃つ型も2027年度の配備開始を目指している。
1. 12式地対艦誘導弾(能力向上型)とは
12式地対艦誘導弾は、陸上自衛隊が2012年度から調達している国産の対艦ミサイルです。トラックに載せた発射機から撃ち、日本に近づく敵の艦艇を沿岸から攻撃することを主な任務としています。射程は公表されていませんが、約200kmと報じられてきました。
「能力向上型」は、この12式を土台に、射程を大幅に伸ばし、レーダーに映りにくい形状にした新しいミサイルです。2020年12月の閣議決定で「スタンド・オフ防衛能力の強化」の一環として開発が決まり、2022年12月の防衛三文書では、相手の射程外から攻撃する反撃能力の中核と位置づけられました。地上から撃つ「地発型」に加え、護衛艦から撃つ「艦発型」、戦闘機から撃つ「空発型」も開発されています。
2. 従来型との違い
【表1】従来型と能力向上型の比較
| 項目 | 従来型(12式) | 能力向上型 |
|---|---|---|
| 射程 | 約200km(報道による) | 約900〜1,500km(報道による) |
| 形状 | 円筒形の一般的なミサイル | 角ばったステルス形状に大きな2枚の翼 |
| 誘導 | 慣性誘導・GPS、終末のレーダー誘導 | 衛星経由のデータリンクで、飛行中に目標艦艇の位置情報を更新できる |
| 推進 | ターボジェット | 発射時にブースター、その後ターボファンエンジンで長距離を飛行 |
| 発射のしかた | 地上の車両から | 地上の車両(地発型)、艦艇(艦発型)、航空機(空発型) |
能力向上型は、敵艦に突入する直前に、あらかじめ組み込んだ複雑な回避の動きをすることで迎撃されにくくしているとされます。一方、車両に積める発射筒の数は従来型より少なく、2025年6月の展示では1両に4本でした。
3. 開発と配備の経過
【表2】主な経過
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2012年度 | 従来型の12式地対艦誘導弾の調達開始 |
| 2020年12月 | スタンド・オフ防衛能力の強化を閣議決定し、能力向上型の開発が決まる |
| 2021年度 | 開発に着手(地発型の事前評価は2021〜2025年度・394億円、各型を含む全体は2021〜2028年度・999億円) |
| 2022年12月 | 防衛三文書で反撃能力の保有を明記。配備の前倒しが決まる |
| 2025年10〜11月 | 計7回の発射試験を実施 |
| 2025年12月19日 | 防衛装備庁が開発完了を発表 |
| 2026年3月17日 | 健軍駐屯地で地元の首長・議員などに地上装置を展示 |
| 2026年3月31日 | 健軍駐屯地(熊本県)に地発型を配備 |
| 2027年度(予定) | 艦発型・空発型の配備開始を目指す。富士駐屯地(静岡県)にも教育拠点として配備予定 |
健軍駐屯地には、従来型の12式を運用してきた第5地対艦ミサイル連隊があります。防衛省は、健軍への配備を2025年度末と2026年度の2回に分けて行い、2027年度には要員の教育などを担う拠点として富士駐屯地に配備する計画を示しています。今後は九州・沖縄方面の部隊にも順次配備される見込みと報じられています。
4. トマホークとの役割分担
日本は国産の12式能力向上型と、米国製のトマホークを組み合わせてスタンド・オフ防衛能力を整えています。トマホークは実戦での使用実績が豊富ですぐに導入できる一方、数量や納入時期は米国の生産状況に左右されます。12式能力向上型は国内で生産・改良できるため、長期的には国産ミサイルの比重を高めていくことが想定されています。
5. 主な論点
意義として挙げられる点
- 抑止力の強化:遠くから敵の艦艇などを攻撃できる能力を持つことで、相手に攻撃を思いとどまらせる効果が期待される。
- 国内の技術基盤:国産であるため、改良や増産を自国の判断で行え、防衛産業の基盤維持にもつながる。
懸念・課題
- 地元の理解:配備先の熊本では、住民向けの説明や展示を求める声が上がり、防衛相は記者会見で検討する考えを示した。有事に攻撃目標になるのではとの不安も出ている。
- 専守防衛との関係:反撃能力として使われる長射程ミサイルの配備が、専守防衛の考え方と整合するかは国会などで議論が続いている。
- 目標情報:遠方の目標を狙うには、衛星などによる目標の探知・追尾の能力が欠かせず、その整備が課題となる。
6. 関連装備・政策へのリンク
- ▶ トマホーク巡航ミサイルとは?国産ミサイルとの役割分担
- ▶ 防衛三文書(2022年版)におけるスタンド・オフ防衛能力
- ▶ 三菱重工業の防衛事業とは?誘導武器の製造
- ▶ 新型護衛艦もがみ型・新型FFMへの艦発型搭載
7. 公的出典・参考資料
- 防衛省「防衛大臣記者会見」2026年3月10日(mod.go.jp)
- 防衛省「12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の配備先について」2025年8月(mod.go.jp)
- Jディフェンスニュース「健軍駐屯地が「12式地対艦誘導弾能力向上型」の展示と配備の予定を公表」2026年3月12日(j-defense.ikaros.jp)
- Motor-Fan「「12式地対艦誘導弾能力向上型」開発完了!」2025年12月21日(motor-fan.jp)
- Wikipedia「12式地対艦誘導弾」(ja.wikipedia.org)
🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)
当解説は、防衛省・防衛装備庁などの公的機関が公表した資料をもとに、DEFENSE NAVI編集室が作成・更新しています。誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからお知らせください。
