いずも型護衛艦の空母化改修|F-35B艦載化の現状と「かが」との違いを解説

izumo_aircraft_carrier_f35b(※画像はイメージ・AI生成コンセプトアートです)

📌 結論・ポイント(3行要約)

  • ヘリ搭載護衛艦をF-35Bの母艦に:海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」「かが」を改修し、短距離離陸・垂直着陸ができるステルス戦闘機F-35Bを発着艦させられるようにする。2018年の防衛計画の大綱で決まった。
  • 「かが」が先行:「かが」は艦首を四角形に作り替える大規模な改修を先に終え、2024年10月には米国サンディエゴ沖で米海兵隊のF-35Bが発着艦する試験を行った。「いずも」は2027年度にかけて同様の改修を進めている。
  • 「攻撃型空母」ではないという政府の説明:政府は、戦闘機を常時搭載する運用は想定しておらず、必要な場合に10機程度のF-35Bを運用する「多機能の護衛艦」であり、憲法上保有できない攻撃型空母には当たらないと説明している。
目次

1. いずも型護衛艦とは

いずも型護衛艦は、海上自衛隊が運用するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)です。1番艦「いずも」は2015年、2番艦「かが」は2017年に就役しました。全長248m、基準排水量約19,500トンで、海上自衛隊で最大の艦艇です。艦首から艦尾まで続く平らな飛行甲板を持ち、もともとは哨戒ヘリコプターを複数機運用して、潜水艦の捜索や災害派遣、輸送などを担うことを想定していました。

2. 改修が決まった背景

2018年12月の防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で、いずも型をF-35Bが運用できるよう改修する方針が決まりました。背景には二つの事情があります。

  • 太平洋側の飛行場の少なさ:日本の太平洋側は戦闘機が使える飛行場が少なく、広い海域での防空に弱点がありました。
  • 滑走路が使えなくなる事態への備え:南西諸島などの飛行場がミサイル攻撃で使えなくなった場合でも、洋上から戦闘機を運用できる手段が求められました。

同じ計画で、航空自衛隊がF-35Bを42機導入することも決まり、艦艇と機体の両面から体制づくりが始まりました。

3. 改修の内容と進み具合

改修は、艦を長期間使えなくならないよう、定期的な検査・修理の時期に合わせて段階的に行われています。主な内容は、ジェット噴射の高熱に耐える甲板の耐熱塗装、着艦の目印となる誘導灯や標示の設置、艦首の形状変更、艦内の区画の改修などです。

【表1】「いずも」と「かが」の改修の流れ

艦名 主な改修・試験 時期
いずも(DDH-183) 1段階目:甲板の耐熱塗装、誘導灯の設置など 2021年6月に完了
いずも 米海兵隊のF-35Bが発着艦(日本の艦艇で初めて) 2021年10月
いずも 2段階目:艦首を四角形に作り替えるなど本格的な改修(JMU磯子工場) 2024年から2027年度にかけて
かが(DDH-184) 艦首を台形から四角形に作り替えるなど大規模な改修 2022年度から。2024年3月に改修後の姿を公開
かが 米国サンディエゴ沖でF-35Bの艦上運用試験(米海兵隊 第23航空試験評価飛行隊) 2024年10月(初着艦は10月20日)

「かが」は2024年10月5日から11月18日まで米国に派遣され、約3週間の洋上試験で、F-35Bの艦上運用に必要なデータを集めました。防衛省は2026年度予算の概算要求でも、いずも型の改修費として287億円を計上し、運用能力をさらに高める改造工事や器材の調達を行う方針を示しています。

4. 諸外国の艦との比較

【表2】F-35Bを運用する主な艦との比較(概数)

艦 全長 主な運用機
いずも型(日本) 248m F-35B(必要な場合に10機程度)、哨戒ヘリコプター
アメリカ級強襲揚陸艦(米海軍) 約257m F-35B、MV-22オスプレイ、各種ヘリコプター
カヴール(イタリア海軍) 約244m F-35B、ヘリコプター(艦首にスキージャンプ台)
クイーン・エリザベス級(英海軍) 約284m F-35B、ヘリコプター(艦首にスキージャンプ台)

いずも型にはスキージャンプ台はなく、平らな甲板から短距離で発艦します。英国のクイーン・エリザベス級のように、F-35Bの運用を前提に設計された艦に比べると規模は小さく、搭載できる機数も限られます。

5. 憲法上の位置づけ:「攻撃型空母」との違い

政府は、憲法第9条の下で保有できない「性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」の例として、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を挙げてきました。そのため、いずも型の改修が「空母保有」に当たるのではないかが国会で議論されました。

政府は、改修後のいずも型について、戦闘機部隊を常時搭載するような運用は行わず、必要がある場合にのみ10機程度のSTOVL機を運用するもので、攻撃型空母には当たらないと説明しています(例:2019年3月 衆議院安全保障委員会での防衛大臣答弁)。改修後も艦種は「護衛艦」のままで、哨戒ヘリコプターによる対潜戦などの任務も続けます。

6. 期待される役割と課題

期待される役割

  • 洋上の防空:陸上の飛行場から離れた太平洋側の海域でも、戦闘機を素早く展開できる。
  • 運用の柔軟性:滑走路が使えない場合の代わりの拠点や、米海兵隊などのF-35Bの受け入れ先にもなる。

課題

  • 搭載機数の少なさ:艦の大きさから運用できる機数は限られ、本格的な空母のような継続的な航空作戦は難しい。
  • 人員と整備体制:艦上での戦闘機の運用・整備に慣れた人材の育成と、航空自衛隊と海上自衛隊の連携が必要になる。
  • 改修期間中の戦力:改修のためドックに入っている間は、ヘリコプター搭載護衛艦としての任務に使える艦が減る。

7. 関連装備・政策へのリンク

8. 公的出典・参考資料

  • 防衛省「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度)」2018年12月(mod.go.jp)
  • 海上自衛隊 公式サイト(護衛艦「いずも」「かが」)(mod.go.jp/msdf)
  • 船舶ニュース funeco「護衛艦かが、米海兵隊 第23航空試験評価飛行隊のF-35Bが初着艦」2024年10月22日(funeco.jp)
  • 乗りものニュース「最大の護衛艦「いずも」が大変貌へ 艦首まるごと付け替え!」2025年9月7日(trafficnews.jp)
  • 国会会議録検索システム(2019年3月8日 衆議院安全保障委員会 第3号)(kokkai.ndl.go.jp)
最終更新日:2026-10-12

🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)

当解説は、防衛省・防衛装備庁などの公的機関が公表した資料をもとに、DEFENSE NAVI編集室が作成・更新しています。誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからお知らせください。

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