トマホーク巡航ミサイルとは?日本が導入する米国製長距離ミサイルを解説

tomahawk_cruise_missile_jmsdf(※画像はイメージ・AI生成コンセプトアートです)

📌 結論・ポイント(3行要約)

  • 反撃能力の早期確保:日本は射程約1,600km級とされる米国製巡航ミサイル「トマホーク」を最大400発取得する。国産の長射程ミサイルが整うまでの間、反撃能力(スタンド・オフ防衛能力)を早く持つための措置。
  • 2024年1月に一括契約:日米両政府は2024年1月、最大400発の取得で契約。半数を一世代前のブロックIVに切り替えて導入を1年前倒しし、2025〜2027年度に取得する。
  • 最初の発射艦は「ちょうかい」:米国で改修と訓練を受けたイージス艦「ちょうかい」が、2026年3月に発射能力を獲得。実射試験を経て実任務に就く予定。
目次

1. トマホーク巡航ミサイルとは

トマホーク(Tomahawk)は、米レイセオン社(現RTX)が開発した長距離巡航ミサイルです。1980年代から米海軍が運用し、湾岸戦争以降の多くの作戦で使われてきた、実戦での使用実績が豊富な兵器です。ジェットエンジンで亜音速で飛び、地形に沿って低空を飛ぶことでレーダーに捉えられにくくし、GPSや地形照合などを組み合わせて目標を精密に攻撃します。

日本が導入するのは、艦艇の垂直発射装置(VLS)から撃つ艦載型です。弾道ミサイルのように放物線を描いて高速で飛ぶのではなく、時間をかけて低空を飛ぶため、敵の発射拠点や指揮中枢などの固定目標を、相手のミサイルが届かない遠方から攻撃する用途に向いています。

2. 導入の経緯

2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略など「防衛三文書」は、相手のミサイル攻撃に対して有効な反撃を加える「反撃能力」の保有を明記しました。その中核となるのが、相手の射程の外から攻撃できるスタンド・オフ・ミサイルです。国産の12式地対艦誘導弾能力向上型などの配備には時間がかかるため、その間を埋める手段として、すでに実用化されているトマホークの導入が決まりました。

【表1】トマホーク導入の主な経過

時期 出来事
2022年12月 防衛三文書で反撃能力の保有を明記。トマホーク取得の方針が示される
2023年10月 当初の計画(ブロックV 400発を2026〜27年度に取得)を見直し、半数をブロックIVに替えて1年前倒しすることで日米が合意
2023年11月 米国務省が日本への売却を承認(国防安全保障協力局=DSCAが通知。最大400発、関連機材を含め総額最大約23.5億ドル)
2024年1月18日 日米政府間で契約が成立。ミサイル本体の取得費は約1,694億円となり、当初の予算計上額(約2,113億円)から約400億円減少。射撃管制装置など関連機材の約847億円も別途契約
2025年度〜 ブロックIVから納入開始(取得は2025〜2027年度の予定)
2025年10月〜2026年3月 イージス艦「ちょうかい」が米国で改修・訓練を受け、発射能力を獲得

3. 日本が取得する2つのタイプ

【表2】ブロックIVとブロックVの違い

項目 ブロックIV ブロックV
取得数 最大200発 最大200発
位置づけ 現行の主力型。導入を前倒しするために採用 ブロックIVの能力向上型。通信・航法機能などを強化
射程 約1,600km級(両型で同等とされる) 約1,600km級
特徴 飛行中に目標を変更できる双方向データリンクを持つ 改良型の派生として、移動する艦艇を狙えるシーカーを持つ型(Va)もある

報道によれば、ブロックIVとブロックVは通信方式などが異なるものの、射程は同等とされています。半数を旧型にしたのは、生産の順番待ちを避けて導入を早めるためで、その結果、取得費も当初見込みより安くなりました。

4. 艦艇への搭載

トマホークを撃つには、艦艇の発射管制システムの改修と乗員の訓練が必要です。防衛省の発表(2026年3月27日)によると、米国に派遣されたイージス艦「ちょうかい」は、2025年10月中旬から米海軍の支援を受けて改修と乗員訓練を行い、トマホークの発射能力を獲得しました。2026年夏頃までに実射試験などを行い、実任務に就けるかを確認する予定で、9月の運用開始を目指すと報じられています。今後は他のイージス艦や、建造中のイージス・システム搭載艦にも順次能力を持たせる計画とされています。

5. 数量400発の根拠と国会での説明

400発という数量について、政府は国会で、厳しい安全保障環境の中で何がどれだけ必要かを現実的なシミュレーションに基づいて検討したと説明しています(例:2023年2月27日 衆議院予算委員会)。一方で、具体的な算定根拠は安全保障上の理由から明らかにされておらず、野党からは十分な説明がないとの批判も出ました。

6. 最新の動向

2026年5月には、米国防長官が日本側にトマホークの納入が大幅に遅れる見通しを伝えたと英紙が報じ、国内各紙も伝えました。遅れの程度や理由は公式には明らかにされておらず、取得計画どおりに数がそろうかは今後の注目点です。

7. 主な論点

導入を支持する意見

  • 抑止の空白を埋める:国産の長射程ミサイルが整うまでの間、実用化された兵器で早期に反撃能力を持てる。
  • 迎撃だけに頼らない:大量のミサイルで迎撃網を飽和させる攻撃に対し、反撃の能力を持つことで相手に攻撃を思いとどまらせる。
  • 日米の連携:米海軍と同じ兵器を使うことで、共同での計画や運用がしやすくなる。

懸念・批判

  • 専守防衛との関係:政府は専守防衛の範囲内と説明していますが、先制攻撃との区別をどう担保するかは議論が続いています。
  • 目標情報の米国依存:遠方の目標を攻撃するための情報収集・目標選定を自前でどこまで行えるかが課題です。
  • 費用と供給:ミサイル本体に加え、艦艇の改修や関連機材の費用がかかり、米国の生産状況にも左右されます。

8. 関連装備・政策へのリンク

9. 公的出典・参考資料

  • 防衛省「護衛艦「ちょうかい」のトマホーク発射能力の獲得について」2026年3月27日(mod.go.jp)
  • 防衛省「令和7年版 防衛白書」スタンド・オフ防衛能力の強化(mod.go.jp)
  • 米国防安全保障協力局(DSCA)”Japan – Tomahawk Weapon System”(2023年11月)(dsca.mil)
  • 時事通信(Arab News Japan 掲載)「日米、トマホーク一括取得契約=400発、旧型変更で400億円減」2024年1月18日(arabnews.jp)
  • 日本経済新聞「海自護衛艦「ちょうかい」でトマホーク発射可に 9月に運用開始」(nikkei.com)
  • 日本経済新聞「トマホーク納入大幅遅れ、ヘグセス米国防長官が日本に伝達 FT報道」2026年5月(nikkei.com)
  • 国会会議録検索システム(2023年2月27日 衆議院予算委員会 第14号)(kokkai.ndl.go.jp)
最終更新日:2026-10-12

🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)

当解説は、防衛省・防衛装備庁などの公的機関が公表した資料をもとに、DEFENSE NAVI編集室が作成・更新しています。誤りにお気づきの場合は、お問い合わせフォームからお知らせください。

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