📌 結論・ポイント(3行要約)
- 日本最大の防衛企業:三菱重工業は、戦闘機、ミサイル、護衛艦、潜水艦、戦車など、陸海空の主要な装備を幅広く手がける日本最大の防衛関連企業。防衛装備庁の中央調達では長年、契約額の首位を占めてきた。
- 防衛・宇宙の受注が急増:2022年の防衛三文書による防衛費の増額を受け、防衛・宇宙事業の受注は2023年度・2024年度とも約1.9兆円に達した。2024年度の売上は8,276億円で、前年度から約36%増えた。
- 生産能力と人材が課題:急増する受注に応えるため、防衛事業の人員を2〜3割増やす計画を示している。一方で、取引先の中小企業を含むサプライチェーンの維持も課題となっている。
1. 三菱重工業の防衛事業とは
三菱重工業(MHI)は、航空機、宇宙ロケット、誘導弾(ミサイル)、艦艇、戦闘車両など、自衛隊の主要な装備品の開発・製造・整備を幅広く担う日本最大の防衛関連企業です。戦後、自衛隊の発足とともに防衛事業を本格化させ、F-15戦闘機のライセンス生産やF-2戦闘機の開発、イージス艦や潜水艦の建造などを手がけてきました。
民間事業で培った航空機、ガスタービン、ロケット、造船などの技術を防衛分野にも生かせる点が強みです。H3ロケットの開発・打ち上げなど宇宙事業も担っており、「防衛・宇宙」として一つの事業にまとめています。
2. 業績の推移
防衛・宇宙事業の売上は、長年おおむね年5,000億円前後で推移してきました(2023年3月期は4,749億円)。2022年12月の防衛三文書で防衛費の大幅な増額が決まったことを受け、受注が急増しています。
【表1】三菱重工の防衛・宇宙事業の業績
| 年度 | 受注高 | 売上収益 |
|---|---|---|
| 2022年度(2023年3月期) | ― | 4,749億円 |
| 2023年度(2024年3月期) | 1兆8,781億円 | 6,064億円 |
| 2024年度(2025年3月期) | 1兆8,768億円 | 8,276億円 |
※同社の決算資料・報道による。2024年度は防空ミサイルシステム関連などの大型案件を受注しました。同社は、防衛・宇宙の売上を2027年3月期に約1兆円へ倍増させる目標を示しています。
3. 主な事業と製品
【表2】三菱重工が手がける主な防衛装備
| 分野 | 主な装備・プロジェクト | 主な拠点 |
|---|---|---|
| 航空機 | 次期戦闘機(GCAP)の日本側の機体取りまとめ、F-35Aの最終組立・検査(FACO)、F-2・F-15の整備 | 小牧南工場(愛知県) |
| 誘導弾 | 12式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、各種地対空・艦対空ミサイル | 名古屋誘導推進システム製作所(愛知県) |
| 艦艇 | もがみ型護衛艦、新型FFM(オーストラリア向けを含む)、たいげい型潜水艦 | 長崎造船所、神戸造船所、三菱重工マリタイムシステムズ(玉野) |
| 陸上装備 | 10式戦車、16式機動戦闘車など | 相模原(神奈川県)ほか |
| 宇宙 | H3ロケットの製造・打ち上げ | 飛島工場(愛知県)など |
2021年には、三井E&S造船の艦艇事業を買収し、三菱重工マリタイムシステムズとして艦艇の建造体制を強化しました。2025年8月にはオーストラリア政府が、同社が提案したもがみ型護衛艦の能力向上型を次期汎用フリゲートに選定し、2026年4月に最初の3隻の建造契約が結ばれています。日本の防衛装備品の輸出としては過去最大級の案件です。
4. 防衛産業をめぐる環境の変化
防衛生産基盤強化法
防衛事業はかつて利益率が低く、撤退する企業が相次ぎました。コマツは2019年に装輪装甲車の新規開発から撤退し、住友重機械工業は2021年に機関銃の新規生産をやめています。こうした流れを止めるため、2023年に防衛生産基盤強化法が成立し、企業努力に応じて最大15%程度の利益率を認める仕組みや、サプライチェーンの調査、事業を続けられなくなった製造施設を国が保有する制度などが導入されました。
生産能力の拡大
受注の急増に対応するため、三菱重工は防衛事業の人員(約6,000〜7,000人)を2〜3割増やす計画を示しました。他事業からの異動に加え、新卒・中途採用も進めています。設備投資も増やす方針で、愛知県の小牧や大江の工場が生産拡大の候補とされています。
5. 主な論点
強み
- 幅広い技術:航空・宇宙・造船・エネルギーで培った技術を防衛装備に生かせる。
- サプライチェーンの取りまとめ:数多くの取引先企業を束ね、大規模な装備品の開発・生産を担える。
- 国際共同開発の窓口:GCAPなどで、海外の大手防衛企業と協業できる規模を持つ。
課題・懸念
- 特定企業への集中:多くの主要装備が1社に集中し、同社の生産能力が防衛力整備全体の制約になるおそれ。
- 取引先の維持:下請けの中小企業の採算や人手不足が、サプライチェーン全体の弱点になりうる。
- 人材と設備:短期間での増産に必要な熟練技能者の育成や、設備投資の回収が長期的な課題。
6. 関連装備・政策へのリンク
7. 公的出典・参考資料
- 三菱重工業「2024年度 決算説明資料」2025年5月9日(mhi.com)
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)「売上高1兆円へ…三菱重工の「防衛事業」急拡大、今後の焦点は?」2023年12月13日(newswitch.jp)
- 防衛省「防衛大臣記者会見」2025年8月5日(オーストラリアの次期汎用フリゲート選定)(mod.go.jp)
- 防衛装備庁「中央調達に係る調達実績」(mod.go.jp/atla)
- e-Gov法令検索「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律(令和5年法律第54号)」(laws.e-gov.go.jp)
🛡️ DEFENSE NAVI 編集室(調査・監修)
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