📌 結論・ポイント(3行要約)
- 日英伊の対等な共同開発:次期戦闘機(GCAP)は、航空自衛隊のF-2と英伊のユーロファイター・タイフーンの後継として、日本・英国・イタリアが共同開発する戦闘機。2035年の配備開始を目標とする。
- 政府間機関と合弁会社による体制:2023年12月に署名した条約に基づき、3か国の政府間機関(GIGO)が英国に発足。2025年6月には設計・開発を担う合弁会社「エッジウィング」が設立された。
- 開発費は年々拡大:日本の予算は2023年度の1,023億円から、2026年度には1,602億円に増加。完成機の第三国への移転は、2024年3月の閣議決定で厳しい条件付きで認められた。
1. 次期戦闘機(GCAP)とは
GCAP(Global Combat Air Programme:グローバル戦闘航空プログラム)は、日本・英国・イタリアの3か国が共同で進める次世代戦闘機の開発計画です。日本では、2035年頃から退役が始まる航空自衛隊のF-2戦闘機の後継機として位置づけられています。英国とイタリアにとっては、現在運用しているユーロファイター・タイフーンの後継となります。
日本はもともと「F-X」として独自の次期戦闘機の開発を検討し、英国は「テンペスト」計画を進めていました。両国が技術協力を重ねた結果、2022年12月9日、日英伊の首脳が両計画を統合し、共通の機体を共同開発すると発表しました。
過去にF-2を日米共同開発した際には、機体を制御するソフトウェアの開示が限られ、日本が自由に改修しにくいという課題がありました。GCAPでは、日本が自国の判断で改修・能力向上できる自由度を確保することが重視されています。
2. 開発体制
政府側:GIGO(GCAP政府間機関)
2023年12月14日、3か国の防衛大臣が東京で「GIGO設立条約」に署名しました。日本の国会は2024年6月に条約を承認し、本部は英国に置かれています。GIGOは3か国政府を代表して開発を管理・発注する機関で、初代の首席行政官には元防衛審議官の岡真臣氏が就任しました。
企業側:合弁会社エッジウィング
2025年6月20日、英BAEシステムズ、伊レオナルド、日本航空機産業振興(JAIEC)の3者が出資する合弁会社「エッジウィング(Edgewing)」が英国で設立されました。JAIECは三菱重工業と日本航空宇宙工業会が共同出資して設立した会社です。2026年には、3か国政府の側からエッジウィングへの大型契約が相次いで結ばれ、7月には設計・開発を進める18か月・46億ポンド(約9,900億円)の契約が発表されています。
【表1】日英伊の主な参加企業
| 分野 | 日本 | 英国 | イタリア |
|---|---|---|---|
| 機体(主契約) | 三菱重工業 | BAEシステムズ | レオナルド |
| エンジン | IHI | ロールス・ロイス | アヴィオ・エアロ |
| 電子機器 | 三菱電機 | レオナルドUK | レオナルドなど |
| ミサイル | ― | MBDA UK | MBDAイタリア |
3. 日本の開発予算の推移
財務省・防衛省の予算資料で確認できる、日本側の主な計上額は次のとおりです。開発が設計段階に入るにつれて、金額は増えています。
【表2】次期戦闘機に関する日本の予算額
| 年度 | 計上額 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 1,023億円 | 次期戦闘機の開発(関連研究を含む取り組み全体は1,054億円) |
| 2024年度 | 682億円 | 開発640億円、共同開発機関(GIGO)への拠出金42億円 |
| 2025年度 | 1,087億円 | 機体及びエンジンの設計等 |
| 2026年度 | 1,602億円 | 機体及びエンジンの設計等(別に、連携する無人機の研究開発48億円) |
4. スケジュール
【表3】GCAPの主な経過と予定
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年12月9日 | 日英伊首脳がGCAPの共同開発を発表 |
| 2023年12月14日 | GIGO設立条約に署名(東京) |
| 2024年3月26日 | 完成機の第三国移転を条件付きで認める方針を閣議決定 |
| 2024年6月 | 国会が条約を承認 |
| 2025年6月20日 | 合弁会社エッジウィングが英国で発足 |
| 2026年 | GCAP側からエッジウィングへ設計・開発の契約(4月、7月) |
| 2035年(目標) | 初号機の配備・就役 |
英国は、計画に先立って独自の実証機の開発も進めており、2027年頃までの初飛行を目標としていると伝えられています。
5. 第三国への移転をめぐる議論
共同開発のパートナーである英伊は、量産数を増やしてコストを下げるため、完成機の輸出を前提にしていました。日本の防衛装備移転三原則の運用指針は、もともと共同開発品の完成品を第三国へ移転することを想定していなかったため、日本だけが輸出できない場合、交渉での立場が弱くなると指摘されました。
政府は2024年3月26日、GCAPの完成機に限って第三国への移転を認める方針を閣議決定しました。ただし、移転先を防衛装備品・技術移転協定などを結んだ国に限ること、現に戦闘が行われている国には移転しないこと、個別の案件ごとに閣議で決定することなど、厳しい条件を付けています。
2023年には、サウジアラビアが計画への参加を望み、日本が慎重な姿勢を示していると英紙が報じるなど、参加国の拡大も議論になっています。
6. 主な論点
推進側の主な主張
- 費用とリスクの分担:単独では巨額になる開発費や技術的なリスクを3か国で分け合える。
- 技術基盤の維持:戦闘機を自ら開発する能力と国内の防衛産業の基盤を維持・強化できる。
- 改修の自由:自衛隊の要求を設計段階から反映でき、将来の改修も自国の判断で行える。
懸念・批判
- 平和国家の理念との関係:戦闘機という殺傷能力の高い装備の輸出は、これまでの抑制的な方針からの大きな転換だとする批判。
- 紛争への関与:輸出した機体が紛争に使われた場合の責任や影響への懸念。
- 多国間開発の難しさ:3か国の要求や予算事情の違いから、遅れや費用増が生じるおそれ。
7. 関連装備・政策へのリンク
- ▶ F-35戦闘機とは?日本が導入する最新ステルス戦闘機を徹底解説 — ハイ・ロー・ミックス運用の比較対象
- ▶ 三菱重工業の防衛事業とは? — GCAP国内機体取りまとめ企業の実態
- ▶ 防衛装備庁(ATLA)とは? — GIGO条約交渉と装備品調達の司令塔
- ▶ 防衛三文書(2022年改定)の重要ポイント — 次期戦闘機開発の位置づけ
8. 公的出典・参考資料
- 財務省「令和8年度 防衛関係予算について」(mof.go.jp)
- 財務省「令和7年度 防衛関係予算について」(mof.go.jp)
- 財務省「令和6年度防衛関係予算のポイント」(mof.go.jp)
- 防衛省「我が国の防衛と予算 令和5年度予算の概要」(mod.go.jp)
- Aviation Wire「日英伊、次期戦闘機開発で合弁会社「エッジウィング」設立」2025年6月21日(aviationwire.jp)
- Aviation Wire「日英伊GCAP、次期戦闘機の設計加速 46億ポンドでエッジウィングと契約」2026年7月6日(aviationwire.jp)
- Leonardo プレスリリース(Edgewing 設立)2025年6月20日(leonardo.com)
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